情報セキュリティマネジメント試験の科目Bは、科目Aのような一問一答形式の知識確認問題とは異なり、ある企業や部署の状況を説明した長文(大問)を読んだうえで、その長文1つにつき2〜3の設問に答える形式で出題される。単なる用語の暗記だけでなく、文中の事実関係を正確に読み取り、その場面で最も適切な判断や行動を選ぶ力が問われる。
科目Bの特徴
科目Bの設問には、次のような特徴がある。
- 1つの大問(長文)に2〜3の設問がひもづく:状況設定(誰が、いつ、何をしたか)を正確に把握したうえで、同じ長文に対する複数の設問に答える必要がある。
- 知識と読解の両方が問われる:問われる知識自体は科目Aで扱う内容(インシデント対応、認証、リスクマネジメントなど)と重なるが、それを具体的な場面に当てはめて判断する力が求められる。
- 「もっとも適切なもの」を選ぶ設問が多い:明らかな誤りだけでなく、一見正しく見える紛らわしい選択肢が混じるため、文中の事実と矛盾しないかを丁寧に照合する必要がある。
科目Bは「新しい知識」を問う科目ではない。ここまでの分野(脅威と攻撃手法、暗号技術、認証とアクセス制御、リスクマネジメント、インシデント対応など)で学んだ内容を、具体的な状況に当てはめて使えるかを確認する総仕上げの科目と捉えるとよい。この演習は3回に分けて、大問1つずつをじっくり読み解いていく。
読み方のコツ
長文を前にすると時間切れを心配しがちだが、次の順序で読むと読み違いを減らせる。
- 登場人物と役割を整理する:誰が担当者で、誰が報告を受け、誰が対応を指示したのかを押さえる。
- 時系列を追う:何がどの順番で起きたかを整理すると、「まだ起きていないこと」と「既に起きたこと」を混同しにくくなる。
- 設問文の主語・時点を確認する:「この時点で」「この対応は」のように、設問が文中のどの場面を指しているかを見極める。
大問:Q社における不審メール対応
従業員300名の精密機器メーカーであるQ社では、経理部のP氏が取引先への支払業務を担当している。ある日、日頃取引のあるR社の担当者名で「振込先口座変更のお知らせ」という件名のメールが届いた。文面は自然で、過去のやり取りの内容が一部引用されていた。
P氏は、差出人のメールアドレスがR社の正規ドメインと1文字だけ異なることに気づき、上長に報告した。上長の指示を受け、P氏は次の表1に示す4つの方法のうち、複数の経路で事実確認を行うことにした。
| 番号 | 確認方法 |
|---|---|
| (一) | メールに記載されている電話番号に電話をかける |
| (二) | あらかじめ社内で把握しているR社の代表電話に電話をかける |
| (三) | メール内の「お問い合わせはこちら」というリンク先から連絡する |
| (四) | 過去にR社から届いた請求書に記載されていた担当者の直通番号に確認する |
P氏が(二)と(四)の方法で確認したところ、R社はそのようなメールを送っていないことが判明した。
経理部はこの件を社内のCSIRTに報告した。CSIRTが他部署への着信状況を確認したところ、営業部にも同一文面のメールが届いており、営業部の担当者はメール中のリンクをクリックしていたものの、遷移先で認証情報の入力はしていなかったことがわかった。CSIRTは営業部の端末を直ちにネットワークから切り離すとともに、全社になりすましメールへの注意喚起を行った。後日の調査で、リンク先は認証情報を盗み取ることを目的としたフィッシングサイトであったことが確認された。
このような事例文では、「誰が」「何に気づき」「どう確認し」「その結果どうだったか」を1文ずつ切り分けて整理すると、設問で問われる場面を素早く特定できる。
以下の理解度チェックでは、上記の大問を踏まえて、攻撃の種類の識別、確認方法の妥当性、インシデント対応の段階という3つの観点から設問を用意した。文中の事実関係に立ち返りながら、それぞれ最も適切な選択肢を選んでほしい。
ぞうログ